まず一言で

結論: 「r が高い」は置き換え可能性を意味しない。測定法比較では、Bland-Altman plot、LoA、LoAの信頼区間、ICCモデル、RC、臨床的許容差をセットで読む。

MRI研究では、T1/T2 mapping、4D Flowの流量、WSS、体積計測、AI segmentationなど、同じ対象を複数の方法や複数回で測る場面が多い。ここで「相関が高いから一致」と書くと、方法論としてかなり弱い。Bland & Altman が警告したのは、まさにこの混同です。

この記事の立ち位置

公開文献にもとづく教育用記事です。特定施設、個別患者、非公開データには依存しません。

Pearson r = 1 でも完全一致 / 加法的バイアス / 乗法的バイアスを区別できない比較
図1. 相関 vs 一致 — r = 1 でも完全一致、加法的バイアス、乗法的バイアスは区別できない。

なぜ相関係数で agreement を測ってはいけないか

Pearson r は「平均からのズレが同じ方向に動くか」を測る量です。したがって、方法Bが方法Aより常に10 mL高くても、あるいは常に20%高くても、点が完全に直線上に乗れば r は1になります。

r = cov(A, B) / (SD(A) · SD(B))
相関
一緒に増減するか。値の置き換え可能性は保証しない。
一致
同じ単位で同じ値を返すか。差の大きさが本体。
加法的バイアス
常に一定量ずれる。キャリブレーションで補正できる場合がある。
比例バイアス
値が大きいほどズレる。log Bland-Altmanを検討する。

Bland-Altman plot — mean vs diff で読む

Bland-Altman plot では、x軸に2法の平均、y軸に差を置きます。中心線が bias、上下線が95% Limits of Agreementです。ここで見るべきは「biasが小さいか」だけではなく、「LoAが臨床的に許容できる幅か」です。

Bland-Altman plot の標準構造
図2. Bland-Altman plot 構築 — bias line、上下LoA、LoAの95% CIを同時に読む。
LoA = bias ± 1.96 · SD(diff)
SE(LoA) ≈ √(3 · SD(diff)^2 / n)

LoAは標本からの推定値なので、信頼区間が必要です。nが小さい研究ほど、LoAの不確実性は大きくなります。n=20程度で「置き換え可能」と断定するのは危険です。

比例バイアスの 2 段比較
図3. 比例バイアス — meanが大きいほどdiffが傾く場合、水平LoAだけでは読めない。
不均一分散を log 変換で水平化するケーススタディ
図4. Log変換 Bland-Altman — 誤差が比率で動く場合は、ratio LoAとして読む。

Repeatability Coefficient — 変化量を語る前のノイズ床

同じ方法を同じ条件で2回測ると、差は測定ノイズだけで揺れます。この揺れの95%範囲が Repeatability Coefficient です。

Test-retest paradigm と Repeatability Coefficient
図5. Test-retest paradigm — 同一被検体2回測定から RC = 2.77 · SDwithin を出す。
RC = 1.96 · √2 · SDwithin = 2.77 · SDwithin

たとえばLV massのRCが8 gなら、5 gの変化を治療効果として断定してはいけません。観測された変化がノイズ床を超えているかを先に確認します。

ICC — 点推定ではなく、モデルと信頼区間で読む

ICCは1種類ではありません。raterをrandomとみなすか、fixedとみなすか、single measurementかaverage measurementか、absolute agreementかconsistencyかで値が変わります。

ICC モデル選択 decision tree
図6. ICCモデル選択 — Shrout & Fleiss / McGraw & Wong 系のモデルを研究デザインから選ぶ。
ICC 点推定と95% CIの解釈
図7. ICCの解釈 — 点推定だけでなく95% CIを読む。nが小さいとexcellentに見えても判定不能になり得る。
場面推奨して考えるICC確認点
inter-observertwo-way random / absolute agreement観察者集団へ一般化したいか
特定2名のratertwo-way mixed / absolute agreementこの2名だけを評価するのか
平均値を使う運用average measures ICC単回測定のICCと混同しない
ランキング目的consistency絶対値の置き換え可能性ではない

臨床的許容差とLoAは別物

LoAは観測されたばらつきです。Clinical Acceptable Thresholdは、臨床判断上ここまでなら許容できるという事前基準です。この2つを混ぜると、解析は後出しになります。

Bland-Altman LoA と clinical acceptable threshold の区別
図8. LoA ≠ Clinical Acceptable Threshold — LoAの信頼区間が事前の許容差に収まるかで判断する。

送信前レビューで見るべき一文

「r=0.95で良好な一致」とだけ書かれている場合、agreementの評価は不足です。Bland-Altman、LoA、LoA CI、ICCモデル、RC、臨床的許容差のどれを使ったのか確認します。

文献軸

  • Bland JM, Altman DG. Statistical methods for assessing agreement between two methods of clinical measurement. Lancet. 1986.
  • Bland JM, Altman DG. Measuring agreement in method comparison studies. Stat Methods Med Res. 1999.
  • Shrout PE, Fleiss JL. Intraclass correlations: uses in assessing rater reliability. Psychol Bull. 1979.
  • McGraw KO, Wong SP. Forming inferences about some intraclass correlation coefficients. Psychol Methods. 1996.
  • Koo TK, Li MY. A guideline of selecting and reporting intraclass correlation coefficients for reliability research. J Chiropr Med. 2016.