Flow Masterclass | Nagoya CS 4D Flow Context
Module 03

TKE / MKE の原理

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平均流と乱流変動を分けて、エネルギー密度として読む

MKEは平均速度ベクトルが持つ運動エネルギー、TKEは平均からの速度変動が持つ乱流運動エネルギーである。4D Flowの速度ベクトルだけでMKEは計算できるが、TKEにはボクセル内速度分散 σ の推定が必要になる。

Bayesian Multi-VENCは、平均速度 v と速度分散 σ を同時に推定できるため、TKE/MKEの基礎に直結する。

最初に押さえる4点

平均流と乱流変動の分解
平均流と乱流変動の分解 | 同じ速い流れでも、整ったjetと乱れたjetではTKEが異なる
TKE/MKEの単位と報告設計
TKE/MKEの単位と報告設計 | J/m³ と mJ を混同しない。密度・ROI・積分範囲を明記する

1. MKEは平均速度、TKEは速度変動を見る

流体の速度は、平均成分 v と変動成分 v' に分けて考えられる。MKEは平均成分の運動エネルギー、TKEは変動成分の運動エネルギーである。

4D Flow MRIの通常出力は各ボクセルの平均速度ベクトルに近い。したがってMKEは比較的直接計算できる。一方、TKEにはボクセル内速度分布の幅、すなわちσの推定が必要になる。

指標式の直感主に反映するもの
MKEρ/2 |v|²平均流速、流量、整流jet
TKEρ/2 Σσi²乱流、速度分散、jet後流
Flow∫ v·n dA断面を通過する体積流量

用語整理

  • Reynolds分解: 瞬時速度を平均成分と変動成分に分ける考え方。
  • σi: 各方向の速度分散の標準偏差。TKEは三方向成分の和で表現する。

運用方法

  • まずvelocity/flowで主たる血行動態を読み、その上でTKE/MKEを補助指標として重ねる。
  • 同じROIでpeak、mean、integralのどれを使うかを事前に決める。

アンチパターン

  • MKEが高いことを乱流が強いと表現する。MKEは平均流のエネルギーであり、乱流そのものではない。

2. TKEはσ推定に強く依存する

Bayesian multipoint velocity encodingでは、複素信号の振幅減衰からボクセル内速度分散σを推定する。TKEはこのσの二乗和に比例するため、σの小さな誤差がTKEに増幅される。

この性質により、TKEは高感度な病態指標になり得る一方、SNR低下、partial volume、wrap残り、CS正則化の影響を受けやすい。

誤差源TKEへの影響確認方法
SNR低下σ過大/不安定magnitudeとTKE hot spot比較
partial volume壁近傍で偽高値血管maskの収縮/拡張感度解析
VENC不適合wrap残り・低VNRVENC別phase確認
CS過正則化σやpeakを平滑化λ/Temporal Scalingの感度解析

用語整理

  • TKE peak: ROI内または全体の最大TKE。病変局所には敏感だがノイズにも敏感。
  • TKE integral: TKE密度を体積で積分した量。総負荷を表しやすい。

運用方法

  • TKE mapを出す時は、同じ断面のmagnitude・velocity・maskも保存する。
  • 研究報告では、TKEの単位、集計方法、血液密度ρ、ROI定義を明記する。

アンチパターン

  • TKE mapを単独で提示し、どの速度情報から出た値か説明しない。

3. 臨床では“負荷の見える化”として効く

大動脈弁狭窄、人工弁、HOCMなどでは、jetや乱流後流が血管・心室内に生じる。Binterらの報告では、健常者に比べて弁狭窄や人工弁症例でTKEが高くなることが示されている。

HOCM関連の報告では、4D Flow MRIにより中隔焼灼後のTKE低下を評価しており、単なる最高流速ではなく血行動態負荷の変化を表す候補指標として位置づけられる。

疾患/場面TKEの意味注意
弁狭窄jet後流の乱流負荷VENCと高速度域
人工弁弁形状による乱流差金属artifact
HOCMLVOT obstruction由来の乱流負荷SAMやLVOT径との関係
門脈系主役はflow/方向だが、複雑流評価に発展余地低速・呼吸・SNR

用語整理

  • HOCM: Hypertrophic obstructive cardiomyopathy。左室流出路狭窄により複雑流が生じる。
  • SAM: Systolic anterior motion。僧帽弁前尖の収縮期前方運動。

運用方法

  • TKEは単独エンドポイントではなく、解剖、velocity、flow、臨床指標と合わせて解釈する。
  • 名大文脈では、Dual-VENC/Bayesian処理の有効性を示す二次指標として整理する。

アンチパターン

  • TKEの数値だけを施設間・装置間で直接比較する。撮像条件と推定方法が異なれば比較できない。

4. MKEは“速い平均流”の見える化

MKEは平均速度ベクトルから計算するため、整った高速jetでも高くなる。TKEが乱れを見るのに対し、MKEは平均流の力強さを表す。両者を並べると、速いが整った流れと、速くて乱れた流れを分けやすい。

WIP039ではWriteData設定によりTKE/MKE出力が制御されるため、どちらを出したか、どちらを解析対象にしたかを残す必要がある。

組み合わせ解釈
MKE高・TKE低速いが比較的整った流れ
MKE高・TKE高高速jetと乱流が同居
MKE低・TKE高平均は遅いが局所混合やノイズの可能性
MKE低・TKE低静穏または低信号で評価不能

用語整理

  • エネルギー密度: 単位体積あたりのエネルギー。J/m³で表す。
  • ROI積分: 密度をボクセル体積で積分し、mJなどの総量にする。

運用方法

  • MKE/TKEのscatter plotを作ると、速度と乱れの分離が見えやすい。
  • 患者説明や報告では、TKEを“乱流の強さ”、MKEを“平均流の力”として分けて書く。

アンチパターン

  • J/m³のpeak値とmJの積分値を同じ単位のように並べる。

主要参考文献・根拠

社内・ローカル根拠: WIP039 AdvFlow CS4D, Bayesian Velocity Unfolding, TKE, Compressed Sensing, ReCAR文献メモ、および名古屋大学訪問書き起こしから抽出した論点を統合。